パートナーから耳の痛い指摘や、強い言葉をぶつけられた時。 私たちの脳は、無意識のうちに「二択の罠」に陥ります。
- 同意する(自分が折れる・我慢する)
- 反発する(相手を論破する・戦う)
多くの人は、この二択の間を激しく行き来し、疲弊していきます。同意し続ければ心がすり減り、反発し続ければ関係が破綻します。
しかし、長続きする穏やかな夫婦関係を築いている人たちは、実はこのどちらも選んでいません。彼らが息をするように実践している「第三の選択肢」があります。
それが、「同意はしないが、受容はする」という技術です。
「同意」と「受容」はまったく違う
言葉にすると似ていますが、この二つは精神的なメカニズムが全く異なります。
- 同意(Agree)とは: 「あなたの言う通りです。私が間違っていました。私の考えをあなたに合わせます」と、自分の心に相手を侵入させ、自己を書き換えること。
- 受容(Acknowledge)とは: 「なるほど、あなたは今、そういう風に感じているんですね」と、相手がそう思っている「事実だけ」を認めること。
相手が感情的になって「なぜこんなこともできないの!?」と攻めてきた時、「同意」しようとすると自己肯定感が削られます。「反発」すると大喧嘩になります。
ここで「受容」のカードを切ります。 「なるほど、あなたは今、私が何もできないと感じて不安(あるいは不満)なんですね」と、心の中で一歩引いて相手の感情を眺めるのです。
ネットスラングで言えば、心の中での「それはあなたの感想ですよね」という究極の防御魔法(ファイアウォール)です。相手をバカにするためではなく、相手の感情の濁流に自分が飲み込まれないための、知的な防衛策です。
夫婦の喧嘩の「69%」は永遠に解決しない
「でも、話し合って解決(同意)しなければ、夫婦としてダメなのでは?」と思うかもしれません。
ここで、一つ面白いデータをご紹介します。 ワシントン大学の名誉教授であり、夫婦関係研究の世界的権威であるジョン・ゴットマン博士は、数千組の夫婦を数十年にわたり追跡調査しました。その結果、衝撃的な事実が判明しました。
『夫婦間の問題の69%は、永遠に解決しない(Perpetual problems)』
どれだけ話し合っても、どれだけ愛し合っていても、金銭感覚、家事のやり方、親戚付き合い、コミュニケーションの癖など、根本的な価値観の違いからくる問題の約7割は、「一生平行線のまま」だというのです。
では、幸福な夫婦と離婚してしまう夫婦の違いはどこにあったのでしょうか?
それは、「問題を解決できたかどうか」ではなく、「解決できない問題(違い)と、どう平和に付き合っていくか」という姿勢の違いでした。
離婚する夫婦は、この69%の解決不能な問題をどうにか「解決(同意)」させようとして相手を変えようとし、果てしなく戦い続けます。 一方、幸福な夫婦は「どうせこの問題は解決しない」と早々に諦め、ユーモアを交えたり、適度に受け流したりして、「違いをそのままにしておく技術」に長けていたのです。
「反応しない」は、最大の愛かもしれない
相手の強い言葉に対して、「自分は簡単には変わらない」と自覚し、感情的に反応しないこと。それは決して、相手を見下したり、見捨てたりすることではありません。
「あなたの意見と、私の考えは別である」という境界線をしっかりと引くこと。
その上で、相手を変えようとするのではなく、自分がやるべき行動を淡々と積み重ねていくこと。
「話し合って一つになる」というロマンチックな幻想を手放した時、初めて見える大人のパートナーシップがあります。
相手の言葉に傷つきやすい人、パートナーの不満をすべて背負い込んでしまう人は、今日から心の中に透明な壁(ファイアウォール)を立ててみてください。
「あなたはそう思うんだね。(でも、私は違うよ)」
この心の声が、あなたの精神を守り、結果的に二人の関係を致命傷から救ってくれるはずです。
結婚相談所YORU
住田北郎