「ありのままの自分」は、乗りこなさないと凶器になる。

結婚相談所の仲人という仕事をしていると、時々、恐ろしい「錯覚」に陥りそうになる。

毎日、たくさんの男女のプロフィールを見比べ、お見合いのデータに触れていると、いつの間にか自分が「婚活の正解を知っている教祖」「先生」になったような気がしてくるのだ。

「なんでこんな重いLINEを送るんだろう」

「なんで初対面で割り勘にしちゃうんだろう」

業界にはこういう会員の行動を「減点対象」とみなし、上から目線で「直せ」「変えろ」と説教する空気が蔓延している。
実を言うと、本気で結婚してほしいと願うあまり、私自身も無意識にその「上からの引力」に引っ張られそうになった時期があった。

でも、ある時気づいたのだ。

「他人の人生の課題を私が勝手に『解決』しようとすること自体が、とてつもなくおこがましいのではないか?」と。


表面的な行動の裏にある「その人なりの正解」

例えば、婚活市場に「絶対に割り勘にしたい男子」がいるとする。

表面的な行動だけを見れば、彼はただの「ケチな男」だ。
普通なら「男なんだから見栄を張って奢りなさい。だからモテないのよ」と一刀両断して終わりになりそうなものである。

でも、本当にそうだろうか?
人は自分にとって何のメリットもない行動は絶対にしない。
彼が割り勘にこだわる裏には、彼なりの強烈な「正解(生存戦略)」があるはずなのだ。

深く話を聞いていくと、こんな本音が見えてくることがある。

  • 無駄な見栄を張りたくない
  • 女性を「養うべき弱い存在」として扱う、古い上下関係が嫌だ
  • お金目当てではなく、自分自身の内面を見てほしい
  • 結婚後は、完全に対等な共同経営者でいたい

そう、彼が達成したいゴール(対等なパートナーシップ)は、今の時代において最高に素晴らしいものなのだ。
ただ、そのゴールに向かうための「初回から割り勘にする」という手段が、婚活市場においては盛大に誤解を生み、エラーを起こしているだけなのだ。

その背景にある原体験や、彼のコアな価値観を無視して、ただ表面上の「割り勘」という行動だけを取り上げ、「マイナスだから直せ」と強制するのは、支援でもなんでもない。

ただの暴力だ。

彼のアイデンティティを奪い、どこにでもいる「無難な量産型の男」に作り変えようとする、支援者側の強烈なエゴでしかない。


だから私は、会員を「直す」ことをやめた。

誰かの弱みや、世間から見たら「異常」とされる個性を見た時。
それを否定するのではなく、親友のように「なんでそんな不器用な戦い方をしてるんだ、最高だな」と、まずは面白がることにした。

相手の価値観の根底にある「正解」を聴き、丸ごと受け止める。 その上で、問題は「私とあなた」の間のテーブルに置く。

「対等でありたいというあなたの目的、最高じゃん。でも、今の戦い方だと相手に伝わる前に死んじゃうぞ。どうする?」

「相手に伝わりやすいように、少し出力のレベルを下げるか。それとも、このままフルスイングして、これを受け止めてくれる超レアな相手を探しに行くか。どっちにする?」

決めるのは私ではない。
ハンドルを握るのは、いつだって本人だ。

解決することすら、一緒に相談して、彼ら自身に選ばせる。
私はその決断を100%支持し、横で一緒に泥をかぶるだけだ。


自分の「バグ」を面白がってくれるパートナーを探せ

婚活とは、自分のバグを隠して完璧な人間を演じるゲームではない。

自分のいびつな個性を自分で理解し、飼いならし、それを「面白いね」と言ってくれる、たった一人のパートナーを探す泥臭い旅だ。

だから私は、これからも偉そうな先生にはならない。

あなたの不器用な個性を誰よりも面白がり、一緒に面白く生きる方法を企む、最強のバディ(親友)でありたいと思う。

結婚相談所ヨル 住田北郎